短編小説『ジョゼと虎と魚たち』これは名作

田辺聖子さんの短編小説『ジョゼと虎と魚たち』を読んで、ちょっとした感想と名作と呼ばれる理由について考えてみた。

目次

色褪せない名作短編小説

こんなにも満足度の高い短編小説には久しぶり。

タイトルの通り、読後の満足感が高い短編小説に出会った。
有名すぎる作品なので、出会ったというよりはなぜ読んでいなかったのか、というよりほかにない。

『ジョゼと虎と魚たち』は芥川賞作家の田辺聖子さんの作品で、
執筆されたのは1985年とずいぶん前である。

2003年に実写映画化され、その後2020年には韓国で実写映画のリメイク。
同年の2020年には劇場アニメ版が公開された人気作品だ。
これだけリメイクされていれば、タイトルだけでも聞いたことある人は多いはず。

私がこの短編小説を読むことになったきっかけは、
本屋で惹きつけられるように気づいたら手を伸ばしていた訳でもなく、
読書家の友人から再三進められていた訳でもなく、
Kindle unlimitedのラインナップに追加されたからである。

文庫本は高いのだ。
Kindle unlimitedは本当に優秀。

短編小説の魅力ってどこ?

おもしろい小説は世の中にたくさんある。
では、なぜおもしろいのだろう? と改めて考えさえられた。

ストーリー

ストーリーは小説の骨格。
ここが破綻していれば、物語として成立しない。

『ジョゼと虎と魚たち』のあらすじはwikipedia様から引用する

下肢麻痺の山村クミ子はジョゼと名乗り、生活保護を受ける祖母と二人暮らし。祖母はジョゼを人前に出すのを嫌がり、夜しか外出させない。ある夜、祖母が離れたすきに何者かがジョゼの車椅子を坂道に突き飛ばす。車椅子を止めたのは大学生の恒夫だった。それをきっかけに恒夫はジョゼの家に顔を出すようになる。ジョゼは恒夫を「管理人」と呼び、高飛車な態度で身の回りの世話をさせる。恒夫は就職活動のためジョゼの家から足が遠のく。市役所に就職が決まり、久しぶりにジョゼを訪ねると、家は他人が住んでおり、ジョゼは祖母を亡くして引っ越したという。

引っ越したアパートを探し当てるとやつれたジョゼが杖をついて出てくる。ジョゼは引っ越しのため家財道具を売り払い、二階に住む「お乳房(ちち)さわらしてくれたら何でも用したる」という中年男性に悩まされていた。心配した恒夫が「痩せて、しなびとる」と口にすると、ジョゼは激昂し出ていけと叫ぶが、恒夫が帰ろうとすると引き留め、すがりつく。その夜、二人は結ばれる。

翌日、恒夫は車を借りて、車椅子を積み込み、ジョゼとドライブする。ジョゼは動物園に行きたいとせがみ、車椅子で虎の檻の前に行く。虎の咆哮に怯えるジョゼは恒夫にすがりつき「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに」という。

ジョゼと恒夫は「新婚旅行」という名目で九州の海底水族館に行く。ジョゼはホテルの対応に悪態をつきながら、水族館の海底トンネルを堪能する。夜中に目を覚ましたジョゼは、自分も恒夫も魚になった、死んだんやな、と思う。それから恒夫はジョゼと籍も入れず親にも知らせない結婚生活を続けている。ジョゼはゆっくり料理を作り、洗濯をして、一年に一遍二人旅に出る。ジョゼは「アタイたちは死んだモンになってる」と思う。ジョゼにとって完全な幸福は死と同義だった。

wikipediaより

あらすじを見ていただけるとわかる通り、
独特の世界観やファンタジー要素は一切ない。

男女のラブストーリー?を中心に話が展開していく。
そもそも短編小説なので、壮大なストーリーを描くことは難しい。

何が言いたいかというと、おもしろい作品とはストーリーに限らないということ。
突飛なアイディアや空想の世界が必ずしも必要な訳ではないのだ。

キャラクター

登場人物は非常に大切である。
読者を惹きつけるキャラクターがいるかいないかは、小説のおもしろさに大きく関わっていると私は感じる。

本作のヒロイン、山村クミ子こと「ジョゼ」は障害を持った女の子。
車いす生活を余儀なくされ、日常生活は不自由そのものだが、悲観的な一面はほどんど覗かせず、
周りを惹きつける「自分の世界」を持っている。

「ジョゼ」って素敵な名前だよねと思えば、自分をジョゼと名乗るし、
大学生の恒夫を「管理人」と呼ぶ独特のセンスはおもしろい。
高飛車でわがままだが、一貫した思考があることが恒夫とのやり取りでよく分かる。

あまり現実には存在しなさそうな女の子だが、
それでも非現実的ではないところが大事なのかもしれない。

自分の信条を持ったキャラクターというのは、
やっぱり読んでいて惹きつけられる。

大学生の「管理人」こと恒夫も同じくらい魅力的なキャラクター。
ジョゼと違って、いわゆる普通の大学生活を送りながらも、
時々ジョゼの家に顔を出すようになる恒夫。

高飛車なジョゼを怒らせないようにしながらも、
「はいはい」と何でも言うことを聞く訳ではない点が、恒夫の自我が垣間見えてリアルだ。

文章力

良文と悪文の判断は主観的になってしまうので、
「これは良い文章だね」なんて偉そうに語れないが、
スッと自分の中に溶け込んでいくような文章が自分が良文とする基準。

『ジョゼと虎と魚たち』は、というよりも田辺聖子さんの文章は、
どんなに時が経ってもその文章のみずみずしさが決して色褪せていないのが凄い。

文章のひとつひとつが心に沁み込んでくるし、
感性が普遍的なものだからではないかと自分は感じた。

表面に浮き出ていない、心のどこかにある何かを、
うまく切り取って文章にしてくれているのである。

だからこそ、短編という短さの中に、
読後の満足感が非常に高いのではないだろうか。

時が経っても色あせない文章というのは、
名作と呼ばれるための絶対条件として外せないだろう。

まとめ

いろいろ書いたが、とにかく読んでみてほしい。
Kindle unlimitedでは現在無料で読むことができるので、
この機会に登録してみるのもおススメする。

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